アスラン編集スタジオ

自社の社員、あるいは社員同士の関係にまず目を向けるということ。

須田敏裕

労務トラブルが起きやすい時代
──本書の冒頭では、「寝坊の原因は起こしてくれる人がいないから」と始末書に書いた若手社員のエピソードが紹介されていて驚きました。こういった問題が高じて、会社が社員から訴えられたり、労災事故が起きたりといった労務トラブルが起きやすくなっているということでしょうか。

根底には厳しい経済情勢があり、
また現在は1つの会社に勤務し続けるケースが少なくなり、
社員の価値観も変わってきています。
以前であれば、社長も社員も譲り合いながらトラブルを回避しようとする傾向があったかもしれませんが、
現在では「どうせやめるなら権利は主張しておこう」という考え方が強くなってきています。
そういう背景もあって、労務トラブルの増加につながっていると感じています。
また最近では、パワハラやパワハラを原因としたメンタルヘルスの問題も増えているようです。

大切なのは人間関係
──過労死や過労自殺などが起こってしまうと、とくに中小企業は労務トラブルによる倒産のリスクもあります。社長はどのように社員と向き合えばよいのでしょうか。

労務関係の本には、「就業規則はこうしたほうがいい」「企業防衛のためには、
こういう規則をつくるべき」とアドバイスするものもありますが、
その前に考えていただきたいことがあります。
まずは、自社の社員、あるいは社員同士の関係にまず目を向けるということ。
本業で頭がいっぱいという社長は、なかなか社内の人間関係に目が向かないところもありますが、
そこに目を向けることによって、うまくいくことがあると思います。

──ご自身が社長さんや会社と関わる上で、重視しているポイントはありますか。

社内の人間関係がいい会社は、ドアを開けて中に入っただけでも雰囲気でわかります。
逆に、社員の人間関係がよくない会社は、そういう雰囲気が出ているものです。
よくない雰囲気を感じたときには、何か問題に結びつくような事態がくすぶっているかもしれないと考えながら対応しています。
私自身が重視しているのは、社長との信頼関係を築くことです。
そのためには社長の話を聞くことが大切ですし、その会社を知ろうとする努力も必要です。
かつて、あるガソリンスタンドに労働基準法違反があって、是正を求めたところ「あなたはうちのことを知らないからそんなことが言えるんだ」と言われたことがありました。
そこで、私自身が実際に作業着を着て現場に立ち、一緒に作業をしながら信頼関係を築いたこともあります。やはり相手は人間ですから、お互いに信頼がないと、指導もうまくいきません。

読み書きに目覚めた少年時代
──本書では、読みやすく引きこまれる文章と事例のリアリティも印象的でした。

社労士として仕事の記録は残しているのですが、執筆にあたってはそうした記録を読み返すことはなかったですね。
インパクトのあった事案は記憶に残っているので、記憶に頼って書いたようなところがあります。

編集者の方に文章をほめていただいたのを機に、自分のことを振り返ってみたのですが、最近になっ
て気づいたことがありました。
私は鉄道が好きでして、小学生のころから『鉄道ジャーナル』のような専門誌を読んでいたんです。
他の電車好きな子のように、見たり乗ったりするのも好きでしたが、『ローカル線問題の現状を考える』みたいな大人が読むような記事に興味を持って読んでいたんですね。
今にして思えば、あれが文章を書く基礎のようなものになったと言えますね。

──読者に向けて、一言お願いします。

会社が倒産した、あるいは職を失っていまだに見つかっていない、事業が立ち行かなくなり回復のめどが立っていない、などという話をよく耳にします。
こういう厳しい時代にあって、労使関係という一面から少しでも状況を打開できるようなことをまとめたつもりです。
本書には労務問題を解決するヒントが盛り込まれていますので、参考にしていただければと思います。

ありがとうございました。
著者略歴

すだとしひろ

群馬県前橋市生まれ。社会保険労務士。須田事務所代表、
労務リスクマネジメント研究所主宰。
合同会社須田敏裕マネジメントオフィス代表社員・業務執行社員。
民間企業を経て2000年社会保険労務士事務所開設。
上場電子機器メーカー関連企業をはじめ、
中・小規模企業で労務コンサルティングに従事する。
また労働局の総合労働相談員も経験、
扱った相談事例はのべ5,000件以上。

PAGE TOP
PAGE TOP