アスラン編集スタジオ

これぞ the 専門店! ニッチ&ニッチ

Takashi Honma
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東京スカイツリーの下に、湘南の風。

「湘南・鎌倉野菜の専門店 おおのや」

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コンセプト 現地でも入手困難な ブランド野菜を東京都内で

8月某日。オープン直後の殺人的な混雑が落ち着きつつある、
東京スカイツリー併設のショッピング施設「ソラマチ」へ。
お目当ては、湘南・鎌倉野菜の専門店として《全国初》出店の「おおのや」だ。
最近、東京都内で「メニューに湘南・鎌倉野菜を使っています」とPRする飲食店はわずかながら出てきたものの、湘南・鎌倉野菜そのものを販売しているお店は皆無である。
なぜなら、湘南・鎌倉野菜は、収穫量が極めて少なく、希少性があるからだ。現地の鎌倉でさえ、ごく一部の小売店を除くと即売所での取り扱いがあるのみ。これほどまでに流通量の少ない湘南・鎌倉野菜が、「おおのや」の出店によって都内で手軽に購入できるようになった。

皆さん、もう見飽きたでしょうがスカイツリーの写真。

皆さん、もう見飽きたでしょうがスカイツリーの写真。

湘南・鎌倉野菜の最大の特徴は、「少量生産制で手間ひまかけてつくられた」ことだ。そのため大量生産の野菜にはない、野菜本来の甘み・苦み・えぐみが味わえる。
もう一つの特徴は、「たくさんの種類の野菜を生産している」こと。湘南・鎌倉野菜と呼ばれるものは約200種類あると言われ、ヨーロッパや中国を原産国とする珍しい野菜が名を連ねる。一つの畑にさまざまな色の野菜が実る様は、その美しさから「鎌倉の七色畑」と呼ばれている。

併設のソラマチの前ではたくさんの子どもたちが水遊びをしていた。

併設のソラマチの前ではたくさんの子どもたちが水遊びをしていた。

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購入者の傾向 目的買いと長時間滞留が このお店の特徴

こちらは本日入荷のコリンキー。店内のあちらこちらに「本日入荷」の札が目立つ。

こちらは本日入荷のコリンキー。店内のあちらこちらに「本日入荷」の札が目立つ。

野菜だけでなく、湘南発のドレッシングやピクルスビネガーなども紹介する。

野菜だけでなく、湘南発のドレッシングやピクルスビネガーなども紹介する。

来店者の傾向を見ていると、デートスポットのスカイツリー併設施設ということで20〜30代のカップルが目立つが、
そのほとんどは店舗内をひと回りして素通りしていく。
実際に購入するのは「20代〜40代の男性客(1人での来店)」と「40代以上の夫婦」である。
男性客と中年夫婦の割合は、4:6。取材したのが休日の17〜18時(平日の男性客の割合はもう少し低いと思われる)ということを考慮しても、
野菜販売店にこれだけ多くの男性が来店するのは、世相の表れだろう。

ちんくわー600円也。プッチーニ400円也。名前を聞いても調理法の想像がつかない……。

ちんくわー600円也。プッチーニ400円也。名前を聞いても調理法の想像がつかない……。

湘南野菜の詰め合わせセットが500円(取材時価格)。ブランド野菜なのに価格はリーズナブル。

湘南野菜の詰め合わせセットが500円(取材時価格)。ブランド野菜なのに価格はリーズナブル。

購入者全体に共通する傾向は、「目的買い」と「長時間滞留」である。
他のショップの袋を持っている人がほとんどいない。このことからスカイツリー観光の「ついで」ではなく、
購買者の大半がおおのやを目的に来店していることがわかる。中には、すいかを丸ごと購入するために、
空っぽのリュックサックを背負って遠方からやってくる人もいる。
購入者の滞留時間は、平均15分〜20分。駅構内のキオスク並みの手狭な店舗スペースで、この滞留時間は長い方だろう。
皆、一つひとつのコーナーをじっくり眺めながら品定めをしている。
湘南・鎌倉野菜は少量生産性。店頭に並ぶものが目まぐるしく入れ替わるため、常連といえども、来店の度に仕入れ状況をチェックする必要がある。
これが長時間滞留につながっている。

情報発信の傾向 ビギナー向けに調理法や湘南野菜の説明を積極的に発信

おおのやが店頭で配布する「おおのや新聞」。紙面では、湘南・鎌倉野菜の基本情報やレシピ集、生産者やスタッフのこだわりなどを紹介する。実際の新聞と同サイズのインパクトある大判サイズ。QRコードを入れてネットへの誘導も行う。

おおのやが店頭で配布する「おおのや新聞」。紙面では、湘南・鎌倉野菜の基本情報やレシピ集、生産者やスタッフのこだわりなどを紹介する。実際の新聞と同サイズのインパクトある大判サイズ。QRコードを入れてネットへの誘導も行う。

バターナッツ南瓜、プッチーニ、ちんくわー……店頭には、見たことも聞いたこともない野菜が多く並ぶ。この「他には売っていない野菜を扱っている」ことが、おおのやの長所であると同時に短所でもある。
珍しい野菜は、調理法がわからない。興味を引かれても、購入を躊躇してしまう人がいるのが現実である。そこで、おおのやでは、野菜の脇にレシピを書いたPOPを積極的に掲示し、販売促進を行っている。
実際に来店者から、「この野菜はどうやって食べるの?」という質問が頻繁に寄せられる。これに対し、店員は「ほとんどの野菜が生で食べられますよ」とアナウンス。サラダなら手軽に食べられるため、調理法にとまどう人の購入を後押しする。さらに突っこんだ質問に対しては、具体的な調理法をていねいにアドバイスする。
また、湘南・鎌倉野菜の知名度は少しづつ上がっているものの、まだその存在を知らない人も多いという問題もある。これを解消するため、店頭で「おおのや新聞」というツールを配布し、湘南・鎌倉野菜の基本情報についての解説を行っている。
合わせて、トマトやきゅうりなどスタンダードな野菜と湘南・鎌倉野菜をセット販売することで、ビギナーの取り込みにも努める。ちなみにこのセットの価格は500円(取材時)。サラダの盛り合わせが2〜3人前つくれるボリュームである。
その他の単品野菜も「350円」「500円」「袋に詰め放題で400円」と手頃な値段が並ぶ。希少性の高い湘南・鎌倉野菜の専門店には価格が高そうなイメージがあるが、おおのやは一般スーパーの価格とほとんど変わりない設定なのだ。
おおのやの店舗活動は、「世の中に知られていないものをどのように広めていくか」のヒントに満ちている。
認知されていない商品やサービスを発売したいという企業の担当者にぜひ一度来店していただきたいショップである。

店頭では、POPを利用してそれぞれの野菜の調理法を解説している。

店頭では、POPを利用してそれぞれの野菜の調理法を解説している。

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PROFILE
 1974年生まれ、秋田県湯沢市出身。
 経営者向け雑誌の記者を経て、制作会社・代理店のコピーライターに。
 アスラン編集スタジオではコンテンツ・ディレクターを務める。

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