アスラン編集スタジオ

起業家インタビュー01 パクチーハウス東京 佐谷 恭 氏 2009.2.1

「旅と平和」をテーマにパクチー料理専門店をオープン
集客への絶対的な自信をもとに、
世界初のパクチー料理専門店をオープンした佐谷恭氏。
起業体験を回想しながら、飲食店経営の魅力や戦略について語っていただいた。

interview01

主な事業
世界初のパクチー料理専門店の運営、コンサルティング、NPO/NGOの経営支援
住所
東京都世田谷区経堂1-25-18 2F
電話番号
03-6310-0355
サイトURL
http://paxihouse.com/tokyo/

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旅と平和が自分のテーマに

私には軸が2つあって、1つは自分の楽しみでもあり趣味でもあり、
人生の中核にしようとしている旅です。
大学在学中に旅を始めて、4年のうち通算すると1年はどこかに行っていました。

一方で会社のキャリアがあるんですけど、
最初に富士通に入って、そこで人事部に採用されて、
主に海外の人事と新卒採用を3シーズンくらい経験しました。
自分としては充実している一方、
面白くなさも感じるようになり、飛びだそうと思って辞めたんですね。

そのときに大学の先輩が会社をつくったと聞いたので、
「会社をつくるとはどういうことだろう」と話を聞きにいったんです。

そうしたら「仕事をしてくれる人を知らない?」と聞かれて、
そんな話から、私が手伝うことになり、1年半かかわる形になりました。

その当時も含めて、旅は真剣にやっていたんですけど、
世間的には遊んでいるのと一緒。
これではいけないな、
真剣にやっているということをきちんと表現しないといけないなと考えて、
そのときに漠然と、
旅人という立場で世界の問題を考えるというテーマが明確になりました。

飲食店をやろうと決意

自分の考えを広めるために一番簡単なのは、
人を集めてそこで話をすることです。

そういうと、セミナー業などを考える人もいるんでしょうけど、
私は予備校時代からやっている飲み会に注目しました。

飲み会やパーティが好きで、
新年会や花見にかこつけて人をたくさん集めるのを得意としていたので、
その方法を使おう、と。

1%の人間を動かすのは、まじめな会合でいいんですけど、
99パーセントの人は、そんなのに興味がありません。
面白そうな集まりを開催して、「収益の1%をここに使います」
などというほうがラクだろうと考えたんですね。

そう考えて、最初は誰かに場所を貸してもらおうと思ったんです。
例えば、飲食店でも、お客さんがあまり入っていない曜日が多いところがある。
そういうお店の集客を請け負って、
代わりに場所を使わせてくださいという虫のいい方法を考えついたんですね。

そこで飲食店の経営の本を読み始めました。
でも、「儲かる飲食店の作り方」といった本を何冊読んでも、
「こんなのじゃ儲からないんじゃないか」と思えて…。
そんなとき、ふと「自分でやったらどうなんだろう」と思い至りました。
そのとき、ドキドキしたのを覚えています。
だってそんなこと、考えたこともなかったのですから。

自分には飲食店の経験もないし、自炊程度の調理経験しかない。
でも、集客ができるのなら、自分の店のほうがいい。
とにかく、集客という観点では、根拠はないですけど、できる自信はあったんです。

世田谷区内で物件を探す

店舗は世田谷区内で探しました。
富士通を退職後に、世田谷区内に住んで、
結婚して住み始めた家も世田谷でしたし、
今後10年以上住みたいと思える街なので、そこでやりたい、と。

当初は、ミーハー的に表参道に出店を考えたりして、
実際に街を見に行ったりもしました。

ただ、よく考えると、会社員というのは遠くの街から会社に通って、
家に帰るとコミュニティがない。隣の人とあいさつもできない。
お父さんはこの町とは関係ないと子どもから思われる。

最近の社会問題は、家の近くで働いたり、
家の近くの人とかかわりを持つことでだいぶ解決するんじゃないかなと思うんです。

「旅と平和」は、世界の平和だけではなく、
足もとの平和を考える会社でもあるので、
自分がミーハーで表参道に店を作っていいのか、と。
だから、まず世田谷に店を作ろうと考えたわけです。

決めたのは、もともと和食の座敷スタイルのお店だったんです。
天井は変えていないし、柱もそのまま使っています。

というのも、計画では少ない金額で工事できる予定だったんですけど、
内装業者さんに言ったら2000万円ぐらいないと店ができないと言われて…。
でもそんなお金なんてない。
だから、この物件を見に来たときに、
そのまま使ってもいいやと思ったんですね。

当初は、スケルトン化するという物件だったんですけど、
解体業者の方が来ていたので、そのままお酒を飲みに行って、
正直に予算を伝えて、一部だけ壊す形で改装してもらいました。

2000万円かかると知っていたら、
絶対に自分で店をやろうとは思ってないでしょう。
だから、お金無くて良かったな、と。
なくてよかったのは常識とお金なんです(笑)。

パクチーにちなんで資本金を準備

資本金が890万円というのは「パクチー」にかけています。
ちなみに、設立も8月9日。
あと、偶然ですけれども、会社設立印3本セットというのを、
たまたまネットオークションで安く落札したところ、それが8900円(笑)。
これはどんな印鑑よりいいんじゃないかと思いました。

資本金を890万集めて、1000万円を借りました。
それで、店のオープン後に資本金くらいのお金が残りました。
開店にだいたい1000万円近くかかった計算になります。

定款などはインターネットで調べて大枠は作って、
法務局に5回くらい行きました。
法務局が最終的に認めるんだから、そこに行っちゃえばいいだろう、と。
そうしたら、ものすごく親切に教えてもらえて、自分の知識にもなりました。
向こうにしてみれば、うるさかったかもしれませんが(笑)。

本当に最初から忙しい人はほとんどいないと思います。
初日からお客さまがくるとしても、それまでに時間があるし、
それぐらいの時間が取れなかったら何もできないと思うので、
手続きは基本的に自分でやったほうがいいとは思います。

ところで、パクチーは、
日本パクチー狂会(パクチーの情報を交換するコミュニティサイト)の
ネタづくりのためにいろいろなところに行ったり、電話したりして、
タイフェスティバルとか関連イベントで話しかけて友達になった人を通じて仕入れています。

それ以外の仕入れに関しては、
ネットで探したり、資料請求したんですけど、
なかなかいいところがなかったんですね。

だから、はじめのうちは業務用スーパーで、
毎日死ぬんじゃないかというくらいの(笑)
重さの買い物を毎日2往復したりしていました。

その買い物の途中に「○○精肉店」などといった配達の車が通ると、
メモをして、電話をして見積もりを取ったりしていきました。
本当に当時はトラックをよく見ていましたね(笑)。

人材採用のポイント

現在は、社員が3人と僕とアルバイト6人で切り盛りしています。
最初の社員として料理をしている人は10年以上前に
カンボジアのプノンペンで一緒にパクチーを食べた人なんです。

オープン後、最初の数ヶ月は、
友達にアルバイトを紹介してもらったりして営業していました。
あとは店に来たお客さんで、将来店をつくりたいという若者がきたので、
1本づりでそのままつかまえて…(笑)。

アルバイトがいなくて大変な時期もあったんですけど、
やっと今なんとか落ち着いてきました。

人の採用に関して、自分に見る目があるとは思っていないんですよ。
ただ、こちらが言うことに対して響く人だったらいいという考えを持っています。

「こういう場所だけど、それでもいいか」という話をして、
良ければ来てもらっているような感じです。

小さい会社だし、給料もたくさんあげられないし、
それでもやってくれるという気持ちがあれば、
その人の能力とか、今後の未来を切り開くお手伝いはしたいと考えています。

直接営業こそが飲食店の王道

融資を受けた銀行の担当者に
「どうやって客を集めるんですか?」と聞かれて、
「知り合いに電話しますよ」と言って失笑を買ったことがあります。

電話だけで集客できるわけではありませんが、
自分には人を呼ぶ自信があったので、そういう発言になったんです。

実際に、営業活動として、チラシを作ったりはしていません。
仲良くしたい店、コンセプトが合っている人には
自分から出かけてあいさつをしています。

そうすると、だいたいの人が店に来てくれたり、
カードを置いてくれます(もちろん、逆にこちらもそのお店を紹介しています)。

だから、直接営業こそが飲食店の王道ではないかなと思うんです。

また、最初は常識的に注文を取って出すという行為しかできなかったので、
現在は「パーティ営業」を仕掛けています。
パーティ営業というのは、貸し切りで誰かに貸すのではなく、
テーマを決めて、それを面白いと思う人が集まって、
来た人同士が交流するというイベントです。

パーティーをすると、営業的にも普段の倍くらい収益が上がります。
また、いろんな人に
「楽しい店はあるけれど、全員が完全に笑顔の店はここしかない」と言われています。

あとは、うるさいくらいにコンセプトを発信しているので、
少しずつ共感してくれる人が増えていると思います。
その人たちと具体的に何をどうやるかはまだ決まっていないんですけど、
コンセプトを固めていく過程としては進んでいると思います。

アイデアは旅から生まれる

「旅」を社名に冠してしまった以上、
常にそのスタイルを意識せざるを得ません。

忙しくてなかなか休ませられないという事情はありますが、
スタッフにはできるだけ長期休暇を取ってほしいですね。

店でずっと仕事をしていると、
仕事がルーチンになるし、速くやるのが勝ちみたいになりますけど、
旅に出ると、必ずいいアイデアが出てくるし、視点が変わります。

飲食店でいうと、旅先で食べたものを、
何か新しいメニューのヒントにしたりできるし、
すべての仕事において、本当にこのプロセスが正しいのかと考える上で、
必ず役に立つ経験ができます。

そのためにも、「休まなければダメ、どこかに行かなければダメ」
という状況をつくりたいと考えています。
2週間とか1カ月のあいだ職場を離れて、
それでも戻ってきたいという環境づくりをしたいと思います。

(2009年2月1日発売 野村佳代著 会社づくりの現実とお役立ちポイント 掲載)

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