アスラン編集スタジオ

起業家インタビュー02 GPSストア 菅野りつ子 氏 2009.2.1

丁寧な対面販売が魅力のハンディGPS専門店を開業
山岳ガイドの経験をもとに、GPSの専門店をオープンした菅野りつ子氏。
店舗探しの秘訣や、独特の営業戦略、支えとなった「人とのつながり」を語っていただいた。

interview02

主な事業
ハンディGPSの販売、GPS導入のための事業所向けコンサルテーション
住所
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-8-4-1F
電話番号
03-3341-2867
サイトURL
http://www.gpsstore.jp/

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山登りの経験をもとに決意

私はOLをしながら、
週末ガイドのような形で山岳ガイドのお手伝いをしたりして、
10年くらい前からGPSを使っていました。
もともとGPS自体、通常は通信販売でしか売っていないものなんですね。
例えば、山屋さんには山用のものが1台とか、
自転車屋さんにはサイクリング用のものが1台とか。
商品の中の1個としては置いてあるんですけど、
説明できる人もいませんし、詳しい店員さんもいません。
そこで、「これだけGPSという言葉が一般的になってきているのだから、
使い方を教えてくれるお店があってもいいのかな」
という気持ちが芽生えてきたんです。

創業塾で資金の相談

お店を出したいと思っても、
どうしたらいいかがわからなかったので、
とりあえず東京商工会議所の創業塾に行ってみました。
コースにもよるんですけど、保証協会の方が毎回出席されていて、
はじめからずっと私たちの話を聞いてくださっているんです。
1回だけ相談会がありまして、借入れの具体的な話が進んでいくので、
創業塾に行くことはおすすめだと思います。
結局、仕事を辞めたのが3月で、創業塾が5~6月。
会社設立が7月で、お店を8月にオープンしました。
申し訳ないくらい、あまり苦労していないです(笑)。
私ともう1人共同経営者がいるのですが、
その人もGPSを昔から使っていて、GPSの本を書いたんですね。
その本が、ちょうど創業の1ヶ月くらい前に書店に並んだということで、
商工会議所でお借りしたお金と印税を含めた自己資金をあわせて、創業資金としました。

店舗の条件は「静かな場所」

店舗に関しては、山を趣味とされる方が多いと思っていたので、
新宿駅からさほど遠くない場所で探しました。
どの山に行くにも新宿駅がベースになりやすいんです。
時間は2カ月くらいかけました。
はじめは大通りの2階にある店舗を考えていたんですけど、
結果的にはそこにしなくてよかったな、と思いました。
というのも、1人のお客さまにご説明するのに、1時間から2時間かかるんです。
そのあいだに、ぷらっと入ってこられる方がいらっしゃったときに、
ご迷惑をお掛けしてしまいます。

開店当時は、いらしていただいたお客さま=ご購入の方という感じだったので、
不特定多数の人が通る場所よりも、静かに落ち着いた場所、ということで選びました。
物件のリフォームは自分たちだけで行っています。
1枚128円の板をたくさん買ってきて、ずらーっと並べただけなんですよ。
陳列棚も、ほとんどお金がかかっていないです。
壁も、漆喰を買ってきて、自分たちで塗ったものです。
休日にお友達に手伝ってもらって1カ月くらいかけました。
8月にオープンというのは、夏休みに合わせるためです。
お友達に手伝ってもらえるし、お客さまも夏休みでいらっしゃるかな、と(笑)。

税理士は近所で見つけた

会社設立にあたっては、
安い手数料でやってくれる司法書士さんが何軒かあったので、
そういうものはプロの方にお任せした方がいいな、と思い、お任せしました。
ちなみに、税理士さんは月々お願いしているわけではなくて、
年に1~2回とか、決算のときくらいにお願いしています。

税理士会館がすぐそばにあって、
近所のいつもご飯を食べに行っているお店に、税理士さんがよく集まっているんです。
そのお店で出会った人に相談をしたら、
やっていただけることになって、ご近所つながりで見つけたというわけです。
税理士会館にいつもきている方なので、
何かあったときに、すぐに相談できるのがありがたいです。

男性のお客さまがほとんど

お客さまの99%が男性です。
やはり、機械モノは男性のほうが得意だからだと思います。
ただ、店員はほとんど女性なんです。
たまたまなんですけど、男性の場合、難しい面もあります。
機械モノはマニアの方がいらっしゃるので、
男性同士だと知識を争うというか、ケンカのようになってしまうことがあるんです。
「こんなことも知らないのか」となってしまうので、その点、女性の方がラクですね。
「そうなんですか~」と感心しながら聞いていられますので。

また、例えば定年退職をされて普段パソコンも使っていない方が、
GPSを使いこなすのは難しいものがあります。
そのため、パソコンを持ってきていただいて、
インストールからお手伝いすることもあります。
お客さまは、林業や海洋関係の方だったり、
レンジャーとか、調査の方などさまざまです。
意外だったのは、GPSをバイクのカーナビとして利用される方が多かったことです。
自転車につけてカーナビにしている方もいらっしゃいます。
個人ユーザーの場合、バイク、自転車で7~8割を占めます。

雑誌の取材がひっきりなし

開業後は、雑誌に1回だけ広告を出して、
あとはインターネットのブログ形式で、
「通信販売はしません」
「店舗販売なので、店舗にいらしてください。使えるようになるまでお教えします」
といいながら、商品を紹介しています。
GPSを入れてドメインも取ったので、最初のうちはかなり助かったと思います。

そして、ありがたいことに、
仲間内でいろいろ雑誌などに記事を書いている人がいるので、
記事を書いてもらえたのも大きかったと思います。
それを見て日経新聞や日経つながりの取材を受けて、
そのあとも毎月取材が続いているんですね。
そういった記事の宣伝効果もあるので、助かっています。

もう1店出店が目標

現在のスタッフは4人です。
全員、趣味で山登りをしたり自転車でGPSを使っているので、
同じレベルで話ができるというのが大切かなと思います。
とにかくスタッフの確保が難しいですね。
GPSの使い方が説明できて、
しかもフィールドで使っているとなると、かなり条件が限られてしまいますので。

お客さまのリクエストとしては、
関西にもう1店出してほしいという声があります。
私自身、最初からその計画を持っているんですけど、スタッフが見つからない状態です(笑)。
ともあれ、ここまで自分の力では何もできていなくて、
本当に人のおかげなんですよ。
自分でどうにかしたというのは、ほとんど何もありません。
人とのつながりが一番大切だな、と実感しています。

(2009年2月1日発売 野村佳代著 会社づくりの現実とお役立ちポイント 掲載)

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