アスラン編集スタジオ

起業家インタビュー06 みのりCafe 鈴木信行 氏 2009.2.1

高品質のコーヒーで勝負 人と人とがかかわるカフェをつくる東京・根津で、
和モダンなたたずまいのカフェを経営する鈴木信行氏。
お店づくりの経緯を含め、スタッフ育成にかける思いや、
夫婦二人三脚での仕事について語っていただいた。

interview06

主な事業
来店者同士が関わり、人と人との交差点となるカフェを運営
住所
東京都文京区根津1-22-10-1F
電話番号
03-3821-3933
サイトURL
http://www.minori-cafe.com/

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部署の移転がきっかけに

製薬メーカーの研究所に13年間勤務して、
退職後1年ほどの準備期間を経て、08年4月に開業しました。
独立への思いは会社に入る前からあったんです。
でも、何をやるかをずっと悩んでいて、カフェをやろうと決めたのは5~6年前のことです。

もともと飲食には興味があったので、
料理教室とか珈琲教室といったセミナーには出ていました。
その中でコーヒーが一番面白いと思って、
とにかく自分が行ける範囲のコーヒー専門店にはできる限り行って、
コーヒーの善し悪しを見極める目を独学で養いました。

会社を辞めるにあたっては、もちろん不安はあるんですけど、
あるとき、会社が部署ごと移転することになったんですね。
移転先が遠くて、単身赴任も気が進まないし、これを機にやろうかな、と。
僕だけが独立するつもりだったんですけど、同じ会社に勤めていた妻も加わることになりました。

和の街に和モダンの店をつくる/strong>

退職後、まずは「コーヒーマイスター」という資格を取りました。
ワインで言う、ソムリエみたいなもので、日本ではある程度認められた資格です。
いくら僕がコーヒーを知っていると言っても、簡単に信じてもらえないので、
客観的な評価がほしいと思ったんですね。
店舗は、文京区、台東区あたりで探していました。

まず1つは自宅から車で通えること。
もう1つは、やはりちょっといいコーヒーを扱うと、
それなりの値段になってしまいます。付加価値がわかってくれる場所を探しました。
具体的には、条件を30くらい書き出して、
「必須条件」「できれば条件」「絶対ダメ条件」と分けて、
連絡先をつけたビラをつくって、近隣の不動産屋さんを全て回りました。
すぐには物件が出てこないので、毎週のように顔を出して、
「まだありませんか?」と声をかけるようにしました。
結局は4か月めに見つかった物件が気に入って契約しました。
決め手は広さです。

カフェをやるにあたって、「人と人の出会いの場にしたい」と考えていたので、
大きすぎず小さすぎず、なおかつ私が立つ場所から客席が見渡せるレイアウトが可能なことが条件でした。
また、屋号の決定には頭を悩ませました。
根津という和風の街に、「コーヒー」「ぶどう(ワイン)」で名前を考えたときに、
ぶどうもコーヒーも、実が実るからおいしいものになるというのが共通点だなと思って、
「みのりCafe」にしました。
自分たちも大きく実っていったらいいな、という願いがこめられています。
根津で和モダンというコンセプトなので、やはり名前にひらがなを入れたいと考えました。
これが根津じゃなかったら、違う名前になっていたと思います。

先輩の意見も参考になる

企資金は会社勤めのときから、ずっと貯めていました。
用意したのが約800万円です。借入がプラス約800万円です。
実際には内装工事が500万円、店舗を借りたり器具備品で200万円。
だいたい700万円くらいを使って開業して、
仕入れやスタート時の消耗品などで100万円くらい使いました。
改装時の業者さんは、飲食関連のフェアでブースを出していたデザイン会社と最初に出会いました。
そのあとの施工会社もデザイン会社から紹介してもらう形になりました。

改装にあたっては、場所が根津なので、そこにとけ込めることを意識しました。
デザイナーには「和モダンでお願いします」と伝えると同時に、
近所に和風のいい店があるので、そこにご案内して、その店とマッチするようにお願いしました。
並行して、仕入れルートを確保し、食器や備品類を揃えました。
その際いちばん活用したのがインターネットです。
ワインセラーも中古品で定価の20%くらいで買っています。
グラス、食器類は業者向けの展示会やフェアもあるので、そこで名刺交換をして、
複数の会社から見積りを取ったりしました。
どれだけの食器を準備するのかというと、まず席数とメニュー構成を決めるんですね。
すると、たいてい食器会社が逆提案してきます。
「これくらいのメニューだったら、このくらいのものをそろえればいいですよ」と。
複数の提案を見比べると「こんなものかな」という見当がついてきます。
あとは珈琲屋さんの先輩が何軒かありますので、彼らに話を聞きました。

先輩たちの声はとても重要でしたね。
せっかくノウハウを持った先輩がいるわけだから、
真似をできるところはどんどん真似をすべきだと思います。
メニューも先輩の声を参考にしました。

スタッフをどう育てるかが重要

開業して感じているのが、スタッフの重要性です。
今現在は6人が登録していて、そのうち誰かがお店に入るという形を取っています。
バイト探しの手段の1つはブログでした。
私が個人でずっとブログを書いているんですけど、店舗探しなどの状況を書いている中に、
バイト募集中であることも書いていたところ、それを見た人から、応募があったんです。

また、工事期間中にバイト募集の張り紙をして、それを見て連絡をもらった人もいます。
あとは、どうしても土日のスタッフもほしかったので、知り合いなどに声を掛けまくりました。
採用のポイントは、逆に僕が聞きたいくらいです。
書類と面接だけで判断するのは本当に難しいことだと思っています。
今登録している6人は、全員が来た者順です。1人も落としていません
(その後は定員に達したので断りました)。
自分から応募してくれた人だったら、
逆にその人の良さを伸ばすのが経営者の仕事ではないかと思うんです。
全部がダメという人は、まずいないと思うので、その人の良さをどう取っていくか。
それは経営者側がやらなければならないことかな、と思います。
もちろん、個々の能力差はあるけれども、
できないからダメじゃなくて、良さを見出して、
そこから仕事を与えていくことをしなければいけないんでしょうね。
その辺は、僕も日々勉強です。

妻と仕事をすることについて

設立後の営業活動は2つやりました。
妻と一緒に店をやるのは、やはりつらいですよ(笑)。
やはり、自分の思い通りにならないですよね。
自分がこの店をやっているつもりでも、決して自分の思い通りにはならなくて、
いちいちお伺いを立てなくてはならない(笑)。
公私混同というのでしょうか、やはりオンオフがなくなってきてしまいます。
夫婦ゲンカをして、それを引きずったまま仕事に入ってしまうこともあり得ますし…。
家にいても仕事の話をしてしまうし、それも善し悪しですね。

夫婦で開業を考えるのであれば、オンオフを切り替える努力は必要だと思います。
この部分は奥さんがやるとか、旦那さんがやる、という役割分担や、
この部分に関しては旦那さんが優先というのを決めたり…。
それは事前に話し合っておいてください(笑)。

ターゲットをしぼった営業活動をする

お客さんが来るかな、というのは今でも不安です。
天気が悪いというニュースを見ると、「お客さん来ないかな」と落ち込んだり…。
それの繰り返しです。
集客の方法としては、ご近所がターゲットの店なので、
こちらから商店会にも入るし、町会にもご挨拶に行くし、
あとは、ちょっと値段が高くても近所の店からものを買うとか…。
やはりお互いさまですよね。
自分のターゲットとするお客さまのところに、
こちらから出向いていく姿勢が必要かなと思います。
そのため、逆にいうと雑誌などには広告を打たないですね。
不特定多数を相手にするわけではないので。
オープンのときには、技術もオペレーションも不安だったので、集客をしなかったんですね。
赤字でもいいから少しずつ慣れていこう、と。
そのあとゴールデンウイークもあって、お客さまが出歩くようになって集客も増えてきたんです。あのとき宣伝を打っていたら、パニックになって、対応できなかったかもしれません。

あとはイベントなども行っています。
コーヒーの専門的な知識をちょっとずつお客さまに理解していただくためのイベントです。
それによって、店の良さをわかってもらう努力はしていますね。

助成金は絶対オススメ

現在、助成金をもらっているんですけど、助成金は使わないと損だと思います。
どの自治体も税収入を増やすために企業を育てようとしています。
開業時だからこそ、もらえる助成金は山ほどあるので、
それはきちんと利用すべきだと思います。
ただ、手続きが結構細かいので、それは注意しないといけません。
こまめに問い合わせたりが必要だと思います。
私は社労士さんに手続きをお願いしました。
社労士さんには報酬を出すんですけど、それでも活用すべき制度だと思います。

将来に備えて人を育てる

今後の第一目標は、毎月必ず黒字にすること。
そのためには、ご近所の方に来てもらわなければいけないので、
付き合いを大切にすることです。
その次は、お客さま同士が、かかわる形にしていきたいので、
うちに来てくれるお客さまの背景をきちんととらえるということですね。
会話の中からお客さまの背景を知って、イベントなどにも来てもらう。
それを1年くらいかけてやって、その先は多店舗展開をしていきたいですね。

たいていの喫茶店は、知り合い同士がしゃべって帰ってしまう。
でもうちは、お客さま同士がつながっていくカフェです。
そんなカフェが地域地域にあってほしいと思うんです。
実は、うちは夫婦2人でも人手は足りる店なんですけど、
必ずスタッフを取るというのはそこなんです。
スタッフの中から、次の人材を発掘していきたいと考えています。
人を雇わなければ儲かるわけです。けど、なぜ人を辞めさせないかというと、
人を育てたいという考えがあるからなんです。

(2009年2月1日発売 野村佳代著 会社づくりの現実とお役立ちポイント 掲載)

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