アスラン編集スタジオ

起業家インタビュー07 サクセス・ロード茅場町 島田早苗 氏 2009.2.1

品質はお客さまがつくる 社会人対象のレンタル自習室
旅行代理店を経て、東京の都心にレンタル自習室を開業した島田早苗氏。
もっとも苦労したという物件探しを中心として、
営業戦略、自習室のポリシーについて語っていただいた。

interview07

主な事業
社会人の各種資格試験に向けた学習のための、「レンタル自習室」を運営
住所
東京都中央区日本橋小網町11-4 日東ビル3F
電話番号
03-6661-1069
サイトURL
http://www.success-road.biz//

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40歳を区切りに踏み出す

大学を卒業後、旅行代理店に17年間勤めました。
そのあと損害保険会社に1年間勤務し、創業サポートセンターに通い、
卒業してから起業という経緯をたどりました。

起業したいと思い始めたのは、5年くらい前でしょうか。
私は実家も自営業でしたし、
自分の力でやっていけることがしたいなと思ったのと、
年齢的にも新しいことを始めようとすると
40歳という年齢が1つのターニングポイントになるような気がしたんです。
この年齢をきっかけに新しいことを始めたいという考えがありました。

それから、旅行代理店という仕事は好きでやりがいもあったんですけど、
「娯楽」という観点ではなくて、「学び」という観点から、
もう1つ仕事に広がりがほしいという考えを持ったということもあります。

創業セミナーでは自分を客観視できる

具体的な行動として始めたのは、創業サポートセンターに行くことでした。
1人で準備していても、自分がどこまで進捗しているかわかりません。
どう進めていったら現実のものになるのかがわからなかったので、
外からアドバイスしたり修正してもらいたいと思ったんです。

専門の先生と話をしながら進めていれば、
見落としていたことに気づいたりできます。
1人で起業することの怖さは、思いこみに走ってしまうことの怖さだと思うので、
それを修正していくために、学校に行くのが一番だと考えました。
学校では、仲間ができたのも大きかったと思います。
仲間がいることで、自分の位置とか、バランスが取れてくるという心強さがありました。

もっとも苦労した物件探し

自習室となる物件探しは非常に時間をかけたので、一番苦労したところでもあります。

まず自習室は、もう30年くらい前から
学生街ではすでにビジネスとして成立していましたので、
学生街にはなじみのある業態だったと思います。
ただ、今回私はあくまで仕事と両立しながら勉強する社会人をターゲットにしていたので、そういった方が利用しやすい地域にこだわりました。

当初は、現在の茅場町以外にも、新宿とか渋谷、お茶の水も探していました。
土地勘のないところでは、一からその街のことを調べなければならないので、
かなり時間がかかってしまいますよね。
その意味で、新宿は私が住んでいる街ですし、渋谷は大学のあった街。
お茶の水は中学高校に通ったところであり、
茅場町は私の生まれ育った地元だったんです。
その中で、一番条件に近いところを選びました。

その条件ですが、まず、
自習室が朝の6時~夜の12時までカードキーで利用できる形になっています。
ただ、通常の物件だと、部屋自体は24時間使っていいけれど、
1階の入り口のカギの開け閉めを自分でやってくださいということになっています。
そうすると私の時間が入り口の開け閉めのために拘束されてしまうわけです。
そのため、トビラのないビルや、開けたままのビルなど、
1階のところで朝晩の開け閉めがない物件を探す必要があり、
その時点で物件の数がしぼられました。

あとは、音の立つ仕事をしている会社がとなりにあると使えないし、
娯楽産業が同居しているところは相応しくないので、同居する会社さんも気に掛けました。
また、広さが30坪と言われても、共有部分を含めてのケースもあり、
物件によって全然違うんですね。
机がいくつ並べられるかで収益が決まってしまうので、
机が並べられる数の目算が立たないと前に進むことができません。
これだと思った物件は、きちんと測ってもらって、チェックしました。
これは余談ですけど、お昼どきに移動パン屋さんが通過するんですが、
それが音楽を鳴らすんです。
最初にそれを見たときに、「ここで止まられたらどうしよう」と心配になったんですけど、
どうやら通過していくことがわかってほっとしたということがありました。
物件を選ぶときに、そこまでチェックしなければいけなかったんだ、
と後から反省させられました。

個人で物件を契約

定款のつくり方などは、
インターネットにサンプルがあったので、それを見ながらつくっていきました。
1人でやること自体は難しくないと思います。

資金に関しては、資本金が800万円。すべて自己資金でまかないました。
順番からいくと、07年10月30日に物件の契約をしました。
その時点では会社ができていないので、個人で契約しました。
本来個人だと、保証人をつけなくてはいけないんですけど、
大家さんのご厚意で、すぐに法人化するという説明をして、
保証人なしで引き受けてくださいました。
このあたりは、初めて起業する人にとっての一番大きなハードルだと思うんです。
信用もないし、実績もないし、なかなか物件が借りられない。
借りるにしても保証人を引き受けてもらえないということがあると思います。
そのために、私の貯蓄を全部お見せしました。
「一応これだけは貯蓄があるので、
たとえ収入がなくても、当面の賃料はお支払いできます」
ということを説明して理解していただいたということです。

そして、同じ10月30日に定款の認証を受けました。
本店の所在地を明記しなければならないので、
物件を契約しておくことが望ましいですよね。
そのため、物件の契約を午前中に行い、午後に定款の認証を受けたという段取りでした。
翌31日に資本金を私個人名の新しい口座をつくって振り込みました。

11月1日に会社設立ということで、
法務局に書類を申請、11月9日に個人名義の口座に入れてあったお金を
全部、会社の口座に移しました。
そのあとに物件の保証金は個人の立て替えのような形で払っていたので、
建て替え分を自分の口座にまた戻しました。

12月27日に、物件を個人名義から会社に変えました。
このときは切り替えと同時に保証人が私個人になるので、公正証書をつくりました。

営業活動として見学会を開催

自習室自体のオープンが12月6日。
営業活動としては、11月の終わりくらいにホームページをオープンして、
12月の3~5日で見学会を行いました。
見学会というのは、自習室を自由に見学してその場で契約できるというものです。
ホームページのほか、ビラをポスティングしたり、駅前で配ったりもしました。
結果的に、ホームページの反応がいちばん大きかったですね。
この3日間で7件の契約が決まりました。

ホームページも私自身が作ったので、一苦労しましたし、
告知期間がないにもかかわらず来てくださった方がいらっしゃったので、
そういう意味でも、私としては大きな自信になりました。

お客さまの8割から9割近くは社会人の方です。
ただ、当初は、20代から30代が多いかなと思っていたんですけど、
意外に40代以降の方も多くて、今でも3割近くは40代以降の方です。

それから、途中下車の形で利用される方が多いと思ったんですけど、
この土地に勤務されている方、あとは住んでいらっしゃる方も多いですね。
それぞれ3割くらいですので、6割の方は、地元の最寄り駅とされている方です。
そして、この自習室の強みはそこだと思っているんです。
地元の方は、ここが一番便利だという判断で、ご利用されているわけですから、
そういうお客さまを固めていけばやっていけると思っています。

自習室のポリシー

レンタル自習室は、
最新設備を入れることでお客さまの興味を引くところがありますが、
そこに反発してあえてシンプルな自習室をつくりました。
設備で集客していくのは、お客さまが分散していく傾向の中で難しいだろうと考えたからです。
設備を良くするには、ある程度規模を大きくしないとペイしないし、
遠方からのお客さまを呼び込まなければなりません。
でも、お客さまは時間を大事にしているから呼び込むのは難しいと思います。

また、設備の良さを売りにしているところは、
次々に新しい設備を用意しなければなりません。
設備は3年も経てばあきられてしまうのではないでしょうか。

私の考えの根底にあるのは、お客さまが品質の担い手だということなんです。
品質は、まじめに一生懸命勉強している人たちです。
朝から晩までお茶を飲んでいるような人がいたら、それが自習室の品質になってしまいます。
一生懸命まじめに勉強する人がいるからいい自習室なんだ、
ということを目指しているし、
お客さまには、ある程度、事前に目的を確認させていただいています。
例えば、営業マンが仕事をするためのスペースがほしいという場合、
真夏なら涼しいところに入りたいと考えるはずです。
でも、自習室は基本的に各種試験会場に合わせるというガイドラインがあります。
誰が利用してもいいということだと、自習室の質が変わってしまうので、
いいお客さまを入れなくてはいけないと考えています。

将来的な目標

今のノウハウを生かすために、もう1店自習室をつくりたいとも考えています。
ただ、今後お客さまが分散される傾向が出てくることが予想されるので、
場所や、規模を慎重に選ばないと生き残れないな、と考えています。

そして、事業基盤が整った後には、世界遺産関連の学習セミナーを考えています。
世界遺産検定にそなえての勉強は、
教科書にそって勉強する形のものが多いですよね。
私は、ちょっと違う視点で、堅苦しいモノではなくて、
趣味も含めて楽しめるものを考えています。
それを進めるにあたって、会社の基盤を支えるためには、
レンタル自習室のような安定した仕事を根底に持ち続けたいと思っています。

(2009年2月1日発売 野村佳代著 会社づくりの現実とお役立ちポイント 掲載)

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