アスラン編集スタジオ

起業家インタビュー08 ウェルビーイング株式会社 小澤 智子 氏 2009.2.1

4足のわらじを履きながら猛勉強 人とかかわる仕事で起業する
40歳での起業を目標に、仕事と勉強を両立しながら、
創業に向けたスケジュールを着実に達成した小澤智子氏。
起業に大切な「強い意志」を持つことの大切さを教えていただいた。

interview08

主な事業
出張アロマセラピーサービス、セラピスト向けセミナー事業、コンサルティング事業
住所
東京都世田谷区上馬2-30-11-202
電話番号
03-6824-5889
サイトURL
http://well-beingpeople.com/

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キャリアを積む中で芽生えた起業意識

最初は証券会社で営業の仕事をして、それから外資系の会社に転職しました。
その会社では、営業企画の仕事をしたり、
マーケティングや人事戦略の仕事に携わり、マネジメント力がついてきたんですね。
経営に興味を持つようになったのも、このころからです。

その後、IT部門に移りましたが、あまり仕事が楽しいとは感じられず、
悶々としながら仕事を続けていたところ、
ある年明けに会社が買収され、転籍することになりました。
今度は、多少所帯が大きくなり、仕事が楽しくなりつつあったのですが、
2年後くらいに、さらに会社が1社を追加買収しました。

転籍直後から、約2年間システム統合の仕事に追われていたのですが、
また会社を買収することで、同様のシステム統合の仕事を数年することになります。
冷静に考えて、自分のやっている仕事に変化がなく、
何年間もスキルが止まったままのように感じられることに愕然としました。
自分の成長を感じられず、「このままでいいんだろうか」と思うようになりました。

人にかかわる仕事がしたい

37歳のときに、「何をやりたいのか」を自分に真剣に問いかけて、
「人」というキーワードが出てきました。

会社でも、人をトレーニングして喜ばれたり、
人から相談を受けることが多かったのですが、
人とかかわるときには、損得を度外視できるくらいに充実感を得ていたんですね。

そんなあるとき、ある後輩から勧められて、
著名なタロット占いに占ってもらう機会がありました。
もともと占いなんて興味がないし、信じてもいなかったので、軽い気持ちでした。

名前と生年月日だけを伝えて、
「私はどんな仕事が合っているでしょうか?」と聞いたら、
「人とかかわる仕事が最適ですよ」と言われたので、びっくりして…。
まさに、自分が考えていたことをそのまま指摘されたので、
体に稲妻が走るような気持ちになりました。

その占い師さんと話しているうちに、
出し抜けに「カウンセラーがいいのでは」という考えが、
突然降って湧いたようにひらめいて、カウンセラーになることを決断しました。

資格試験の勉強に邁進

自分で調べたところ、
カウンセラーになるには大学に行かなければならないことがわかりました。
私は短大を卒業しているので、その分の単位は満たしています。
編入して、2年~3年かけて卒業する計画を立てました。

もっとも、資格をとってカウンセラーになっても、
ほとんどの場合、職業としては成立しない、つまり食べていけないこともわかり、
「カウンセラーと何かを組み合わせよう」と考えました。

カウンセリングにくる方は、癒しを求めているケースがほとんどです。
そこで、「癒し」をキーワードに検索していったところ、
「アロマセラピー」が浮上してきました。

それから、「産業カウンセラー」と「アロマセラピスト」という
2つの資格の取得に向けた勉強を開始すると同時に、
会社勤務と大学進学という4足のわらじを履くことになりました。

そのときは、文字通り寝る間も惜しむように勉強をしました。
毎朝始業前に1時間は勉強をして、
電車の中や歩いているときも、参考書を片手に勉強をしていました。

会社でも、小休止する時間には、
パソコンに勉強用の付せんを貼っておいて、
何かの知識を暗記する努力をしていたんです。

そのころを思い返してみると、
普通では考えられないようなパワーがあったと思います。
「継続は力なり」を、身を以て実感しましたね。

創業セミナーに通う

また、「東商・創業ゼミナール」という講座があることを知って、
申し込むことにしました。8回コースで5000円。
他の講座より圧倒的に低価格なのが魅力でした。
一般的な創業セミナーに通うと、それなりの受講料が必要となりますが、
それを出すのはちょっと癪だなと思ったんです。

ただ、講座は人気があって、抽選制となっていたんですね。
1回目は抽選にもれてしまったのですが、2回目には備考欄に
「こういうスケジュールで創業を計画しています。
今度のタイミングで講座が受けられないと、
計画が頓挫してしまうので、ぜひお願いします」
というのを切々と書いて訴えました。

講座を主催する側にすれば、
きちんと起業してくれるであろう受講者を
優先的に受け入れたいと考えるのは当然のことです。

何事も、相手の立場に立って物事を考えることの大切さを、改めて認識しましたね。

設立手続きは低コストで

会社を設立するにあたって念頭においていたのは、
極力低コストで手続きをするということです。
登記登録は自分でやろうと考え、公証役場に行って、
書類をチェックしてもらいました。
公証役場の人は本当に親切に教えてくれます。

5月1日に法人化したのは、ちょうど会社法が改正になったからです。
ただ、5月1日に案件が何十件もあると、公証役場が手一杯になってしまう。
最初は徹夜で並ぶことも覚悟していて、
前日の夜中に公証役場を見に行ったりしました。
結局、翌朝早くに出かけたのですが、すでに1人並んでいます。
この人が行政書士さんで、案件をたくさんかかえていたらどうしよう、と。
結局は大丈夫だったんですけど、そんなこともありました。

パートナーとの出会い

一緒に会社を起ち上げたパートナーは、趣味のマージャンサークルの仲間です。
この話をすると一様に、「ええーっ!」と驚かれます。
でも私にしてみれば、逆にマージャン仲間だからこそ、信頼に価すると考えたわけです。

というのも、私が所属していた女性マージャンサークルでは、
誰も本名を名乗らないし、どんな仕事をしているのかも、
お互い話すことがありませんでした。
とにかくマージャンの話しかしないわけですから。

つまり、肩書きも何もない、
「素の自分」で周囲とコミュニケーションが取れたんですよね。
その中でも彼女とはウマがあって、尊敬できる人間性を知ることができました。
本当に顧客のために仕事ができる人だとわかったので、
一緒に仕事をしようと誘いました。

40歳というタイミングで起業してよかったと思うのは、
これまでに培ってきた人脈を生かすことができたことです。
どんなジャンルのことでも、知り合いに専門家がいたり、
直接知らなくても、人を介して1人か2人たどっていけば、必ず誰かひっかかります。

創業後にわかったこと

創業後に感じたのは、
宣伝費にはあまりお金をかける必要はないということです。

ある雑誌に記事広告を出したことがあったのですが、
反応が1件もこない経験がありました。

知人もフルカラーの2ページ広告に100万円ほどかけて、
まったく無反応だったという話があるくらいです。
もちろん業種によって反応に違いはあるのでしょうが…。

それより、各種の媒体から取材を受けることが多くて、
一度取材を受けたところからの紹介で、別の取材を受けることもあります。

雑誌の編集者やライターの方は、常にネタを探しているので、
「記事になりそうなネタを提供する」ことを念頭においてお付き合いすれば、
たいていなんらかの形で紹介してくれるものです。
現在では、月に1回程度は取材を受けていて、
その宣伝効果もあるので助かっています。

あとは月に3000枚程度のポスティングをしています。
月に2~3件の反応があり、それだけでもコストを回収できるのですが、
そのお客さまがほとんどリピーターになってくださるので、
もっともチープで費用対効果のある方法だと考えています。

それから、会社を作ったばかりのころ、
A4フルカラーのチラシを印刷して50万円くらいかけたんです。

私は「大企業病」と呼んでいるのですが、
大きな会社で仕事をしていると、
付き合う会社も大きな会社であることが多く、取引する金額も大きくなります。

その感覚で見積りを取ると、
ちょっと他より低い額を提示されただけで「安い」と思ってしまいます。
でも、実際には探せばもっと安い金額で仕事をしてくれるところが、
ごろごろあったりします。

チラシの件でも、同じようなものを数万円で印刷してくれる
業者さんがあることが後でわかりました。

中小企業の仲間が増えてきて、彼らと話をするようになると、
その辺りはシビアに見極める力を持っていることがわかりますし、
彼らから紹介してもらうと、
本当に安く確実な仕事をしてくれる業者さんに出会うことができます。

これから会社を作ろうとする人は、
自分にかかわりがあると思われる会社は、
最初からおおよそ絞られているはずなので、
時間をかけて、付き合うべき会社をあらかじめ見極めておくことが大切だと思います。

起業したい人へのアドバイス

「お金になる仕事」だけを追い求めていくと、
次第に「やりたかったこと」からずれていってしまいます。

ちょっとした「ブレ」が次第に修復困難なくらいに拡大してしまい、
気がつくとまったく楽しくない仕事に追われているというケースも少なくありません。
そのためにも、しっかりとした計画をつくっておくことは大切だと思います。

また、十分な貯金をすることも大切です。
前職の仕事を活かして起業をする場合には、最低1年くらい。

私のようにゼロベースから新たな業種に参入する場合には
2年くらいの生活費を蓄えておくことをおすすめします。

創業してすぐに顧客が急激に増えるということはほとんどありません。
そのときに生活費がないと焦ってしまい、
焦って行動すると、よい結果をもたらさないからです。

私は経理にまったく無知で、創業前には他の勉強をしていたこともあり、
経理を勉強する時間の余地もなく、会社を設立してから勉強することになったのですが、
これは事前に勉強しておいて損はないと思います。

そして、起業をするうえで重要なのは、「強い意志」があるかどうかです。
今は誰でも起業しやすい環境が整っています。
ただ、全員が会社を続けていけるとは限りません。
続けていけるかどうかの違いは、
経営者の「これで食べていく」という意志にあるのではないでしょうか。

(2009年2月1日発売 野村佳代著 会社づくりの現実とお役立ちポイント 掲載)

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