アスラン編集スタジオ

進化する次世代図書館

Nendai Watanabe
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民間企業が運営する図書館、
異業種の店舗と組み合わせた異色の図書館など、
いま、図書館が大きな変貌期を迎えている。
そんな次世代の図書館をレポートする。

2013年は図書館に注目が集まった1年だった。4月には佐賀県武雄市の図書館が全面改装を行い、TSUTAYAで知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定管理者とする運営を開始。貸し出しカードにCCCが発行するTカードの導入や、スターバックスカフェの併設などが話題となった。

10月時点での同館の利用者数は、対前年比355%に達するなど、施設としての集客力が上がったのは確か。すでに観光施設の一つに定着しつつあり、県外からの来館者も多い。

一方で、12月には、同図書館は「商業施設」に当たるとして、近隣の中学校長が登下校時に生徒だけで立ち寄るのを禁止したことが判明。のちに市長の抗議もあり、学校側が指導の撤回を表明するなどがニュースとなったのも記憶に新しい。

一企業が運営することによる個人情報の取り扱いへの危惧を唱える市民も少なくなく、武雄市立図書館を巡っては、毀誉褒貶相半ばし、議論の尽きない状況が続いている。

いずれにせよ、同館が図書館のあり方に一石を投じたのは間違いなく、よくも悪くも今後の図書館運営に影響を与えることになるだろう。

図書館を超えた武蔵野プレイス

次世型図書館の一つとして2012年にオープン以来、注目を集める東京・武蔵野市の「武蔵野プレイス」を訪ねた。

武蔵野プレイスの独特な外観

武蔵野プレイスの独特な外観

武蔵野プレイス──名称からして図書館の要素が感じられないこの施設。図書館にとどまらず、市民活動や青少年活動、生涯学習を支援する機能が集合した複合施設である。

都内西部、中央線の武蔵境駅を下車してほぼ目の前の一等地。手前に広場を備えた開放的な空間に、図書館らしからぬ建物が建っている。地上4階、地下3階からなり、白く明るい外観に横長の丸窓も印象的だ。

館内に入ると、出し抜けにコーヒーの香りが漂ってくる。1階のフロア中央は、近辺のカフェにもひけをとらない、おしゃれな館内カフェが占拠している。館内の雑誌を読む人、学習講座や活動団体に参加後、仲間と語らう人、子供連れの親子……。図書館ではあるが、ここでは私語が大っぴらに奨励されている。カフェは夜9時半まで営業しており(施設自体は夜10時まで開館)、仕事帰りにビールと読書を楽しむサラリーマンの姿も見られる。

館内には無線LANも飛んでおり、ノマドワーカーの姿も散見される。地下二階は青少年の専用フロアとなっていて、受験勉強をする学生のほか、サウンドスタジオでバンドの練習に励んだり、ダンスや演劇練習を行ったりする若者が集う。

館内のそれぞれの空間に仕切りがなく、つながりを持って設計されているのも心地よさを演出している。

ビジネス支援サービスも充実

ビジネス支援サービスに取り組む図書館も全国各地で広がりを見せている。ビジネス支援サービスとは、起業や新規事業の展開、経営に必要な情報の提供や相談を行う一連のサービスを指す。

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長居したくなる読書スペース

2000年にはビジネス支援図書館推進協議会が設立され、さまざまな図書館がセミナーの開催などを通じてビジネス支援に取り組んできた経緯がある。現在、公立図書館約3200館のうち、ビジネス支援を行う図書館は約200館以上となっている。

中でも、全国の公立図書館を対象に行った調査で「活動が優れ、注目を集めている図書館」で1位の国会図書館に次ぐ第2位になったのが鳥取県立図書館だ。

同館は2004年にビジネス支援活動を開始。ビジネス関連書籍約1000冊や企業情報などの無料データベースを備える。「○○の市場規模は?」「△△の生産量とシェアが知りたい」日々寄せられるさまざまな相談に担当司書が応じるほか、専門家の紹介も行っている。

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仕切りのない開放的な空間

実際に商品化が実現した事例も報告されている。その1つが、店舗や車庫のシャッターを強風から守る「シャッターガード」。図書館がシャッターに関する資料を提供し、技術者や専門家も紹介したことで実用化のみちすじが開かれたという。

「本を借りる場所」という従来の位置づけを超えて、図書館は地域の情報拠点としての存在感を着実に大きなものにしているのがわかる。

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武蔵野プレイス
 〒180-0023武蔵野市境南町2-3-18
 TEL 0422-30-1905
 JR中央線・西武多摩川線
 「武蔵境駅」南口下車、徒歩1分

 

NENDAI WATANABE
PROFILE 1975年生まれ。栃木県佐野市出身。慶應義塾大学文学部卒。 出版社→フリーター→出版社勤務を経て、2007年アスラン編集スタジオに参加。 ライティングと編集に携わり現在にいたる。
※2014年2月発行の、ビジネスお役立ちマガジン「Aslan Plus vol.2」に掲載された記事の転載です。
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