三笠書房『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』制作に関わった当事者の1人として、個人の見解を書き記します。

まず、本書の情報を目にして傷つかれた方、不快に思われた方に深くお詫びを申し上げます。

本書につきまして、私は編集協力として参加しました。本書においては、著者・編集者を交えた打ち合わせの場で、著者の考えを聞き取り、基礎的な素材をまとめる役割を担いました。

出版社から提示された企画書には、職場の「困った人」とうまくコミュニケーションを取るための内容であると記されていました。同様のテーマを扱う書籍も存在することから、特に違和感を覚えませんでした。

この時点で本書は、読者が前向きに働ける社会をつくるための内容であると解釈しており、差別を含む表現という認識はございませんでした。今振り返りますと、思慮不足であったと反省しております。

あくまで私の認識ですが、打ち合わせの場では障害・疾患の有無にかかわらずすべての人を対象としてタイプ分けするという前提で議論が進んでおりました。聞き取り後は、この前提に基づき著者の考えを整理し、納品しました。

納品後は、著者・出版社の手により編集・制作が進められたため、具体的な工程に関しては聞き及んでおりません。校正刷などを通じて完成したテキスト、デザイン、挿画等を確認する機会がなかったことについては、同様の進行を過去にも経験していたため、それが本書における役割分担であると認識していました。

しかしながら、私が整理した著者の見解の中に、差別を想起させる表現がなかったとは言い切れません。編集方針については口出しする立場にない、で片づけるのではなく、本書の表現に問題がなかったか、著者・編集者との丁寧かつ継続的な議論を働きかけるべきでした。

本書との関わりの中で、差別や偏見の意図はありませんでしたが、多くの方を傷つける表現に関与した事実は拭えません。日々の業務に追われる中で、倫理観や想像力を失っていたことに無自覚でした。

2025年4月18日に出された出版社の見解は、残念ながら私の思いとはかけ離れた内容でした。

確かに差別意識や偏見はないという出版社と著者の見解は、私自身が打ち合わせの場で受けた印象とも重なっています。しかしながら、今回の件は「差別意図がなかった」「表現の自由」などでは済まされない重大な問題であると受け止めています。

当事者として、表現に関わる者として謝罪すべきとの認識に立ち、長年のビジネスパートナーであり、本書の本文デザイン・DTPを担当されたアスラン編集スタジオとともに見解を発表するに至りました。謝罪が遅れてしまい、誠に申し訳ございません。

なお、出版社には本見解を通知の上、発表の許可を得ております。

改めて、本書により傷つかれた方、不快に思われた方に心より謝罪いたします。大変申し訳ございませんでした。

2025年4月22日 渡辺稔大

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